自力、且つオンラインで合同会社に業務執行社員を加入登記する手順(テンプレートあり)
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おおまかな手順
- 持分譲渡契約書を作成(法務局への提出は必要無し)
- 総社員の同意書を作成(はんこは必要無いらしいが一応押して郵送)
- 申請用総合ソフトで「合同会社変更登記申請書」を作成・申請・登録免許税の納付
- 総社員の同意書を法務局へ簡易書留にて送付
- 同意書の到着から7日程で「手続終了」のメールが来て登記完了
経緯
前提条件
- 2022年1月に設立した代表社員1名(自分)のみの合同会社
- 今回加入する社員は在留資格が永住者の外国人の友人
- 新たな出資はせずに、代表社員(自分)から持分一部譲渡による(新)社員の加入
すべては社会保険料を節約するため
今回の新社員の加入は、俗に言うマイクロ法人というスキームで社会保険料を節約するのが目的です。
新社員になる外国人の友人は、永住権を取得したのをきっかけに正社員を辞め、フリーランスとして独立しました。 フリーランスとしてまだまだ収入の目処が立っているわけではありませんが、正社員時代の年収がかなり高く、退職後の国民健康保険料が高額になることが見込まれていました。 そこで自分が経営している合同会社に業務執行社員として加入してもらい、最低額の社会保険に加入することが決まりました。
オンライン登記は怖くない
今回は合同会社なので商業登記ですが、数か月前に共同名義で所有している不動産登記の住所変更を、申請用総合ソフトを使ってオンラインで行いました。
一度法務局から電話があり修正(補正)が必要だったものの、申請用総合ソフト上でどこをどう修正すれば良いかが記載されており、指定されたとおりに修正し再申請すれば問題なく住所変更することができました。 その経験があったため、今回の合同会社への社員加入の登記もオンライン、且つ自分でやってみようと思い立ったわけです。
今回は加入する社員が外国人ということもあり、法務局が行っている「ウェブ登記手続案内」を利用し20分ほど司法書士の先生に疑問点を相談させていただきました。 最終的には今回の変更登記は一度の修正もなく、申請用総合ソフトでの登記申請→法務局へ総社員の同意書を送付、の2ステップで手続きが完了しました。
個別ケースで疑問に思った点
外国人の名前はどうやって登記すれば良いのか?
結論から言うと、スペースなしのカタカナのフルネームを入力します。
別のサイトでは「・」をスペースの代わりに入力するという情報を見かけたのですが、ウェブ登記手続案内でお話させていただいた司法書士の先生曰く、「・」やスペースは入力せずにカタカタを続けて入力すれば良いそうです。実際その通りに登記申請をしましたが、無事に登記されました。
定款によると代表社員の互選が必要ってあるけど?
こちらも結論から言うと、互選の必要はありません。というか互選の必要が無いように、登記申請前に定款を変更してしまいます。
自分が合同会社を設立したときはfreee会社設立を使ったのですが、デフォルトのまま作成した定款には代表社員について下記のような記載がされていました。
定款(オリジナル)
第9条 業務執行社員が2名以上ある場合は、そのうち1名以上を代表社員とし、業務執行社員の互選をもって、これを定める。 2 業務執行社員が1名の場合は、当該業務執行社員を代表社員とする。
しかし互選をするとなると今回の変更登記申請での添付書類が増えてしまうようなのです。 どうせ外国人の友人は出資もしていないし、言語の問題もあり手続き系の仕事はすべて自分が受け持つことになります。 だったら最初から定款に「業務執行社員○○○○は、当会社を代表する。」と記載してしまうことにしました。
定款(変更後)
第9条 業務執行社員〇〇○○は、当会社を代表する。
設立時の定款作成には行政書士の電子署名が必要だったのですが、会社を設立後の定款変更にはそういったものは必要なく、社内で変更の記録が残っていれば問題ないそうです。(ウェブ登記手続案内で確認済み)
そして変更登記申請の際に添付する「総社員の同意書」の中に下記の文言を記載しました。
総社員の同意書(一部抜粋)
定款第9条は現状通りとする。
第9条 業務執行社員〇〇○○は、当会社を代表する。
こちらも問題なく設立者の自分が唯一の代表社員のまま、新しく加入した友人は業務執行社員として登記されていました。
テンプレート
注意
ここで紹介しているのは、自社の場合の記載例です。 それぞれ個別の会社の実情に合わせて作成してください。
持分譲渡契約書
持分譲渡契約書(記載例)
持分譲渡契約書
○○○○(以下、「甲」という。)と○○○○(以下、「乙」という。)とは、○○○○(以下、 「丙」という。)の持分の譲渡について、次の通り契約を締結する。
第1条(目的) 甲は、丙の持分金〇〇万円を乙に譲渡するものとし、乙はこれを譲り受けるものとする。
第2条(譲渡価格) 乙は、甲に対し、持分の譲渡期日において、本件持分の譲渡の対価として、金〇〇万円を、甲の指定する方法 により支払うものとする。
第3条(譲渡の期日) 譲渡の期日は、令和○年○月○日とする。
第4条(保証)
甲は乙に対し、次の事項について保証する。 1 本契約の締結に必要な法令上・社内上必要な手続きを完了していること。 2 本件持分の譲渡について、丙の全社員の同意及び第三者の許認可承諾等の必要な手続が譲渡日までに 完了していること。
3 本件持分が有効なものであり、かつ甲は、その完全な権利者であること。 4 令和○年○月○日現在の丙の貸借対照表及び損益計算書の内容が正確であり、丙が記載外の債務を一切 負担していないこと。
第5条(契約の変更・解除) 本契約締結の日から譲渡の期日に至までの間において、丙の資産もしくは経営状況に重大な変更が生じたとき、あるいは隠れた重大な瑕疵等が発見された場合には、甲乙協議の上、譲渡条件変更や本契約の解除をす ることができる。
第6条(損害賠償) 甲又は乙が、本契約に違反して相手方に損害を与えた場合は、その損害の一切を賠償するものとする。
第7条(信義則) 甲及び乙は、本契約の解釈につき疑義が生じた場合、又は本契約に定めのない事項が生じた場合には、お 互いに誠実に協議してこれを解決する。
以上、本契約の成立を証するため、本通2通を作成し、甲乙記名捺印の上、各1通を保有する。 令和6年7月1日
甲 住所 ○○○○○○○○○○○○ 氏名 ○○○○ 印
乙 住所 ○○○○○○○○○○○○ 氏名 ○○○○ 印
Googleドキュメント
総社員の同意書
総社員の同意書(記載例)
同意書
1 当会社の業務執行社員○○○○は、その持分の一部を○○○○に譲渡し、これを譲り受けた○○○○は、同時に業務執行社員として加入すること。
新加入社員の氏名及び住所並びに出資の目的及び価額は、次のとおり。
○○○○○○○○○○○○(←住所)
金○○万円 全部履行 有限責任社員○○○○
1 定款第6条を次のとおり変更すること。
第6条 社員の氏名、住所、及び出資の価額並びに責任は次のとおりである。
金 ○○万円
○○○○○○○○○○○○(←住所)
有限責任社員 ○○○○
金 ○○万円
○○○○○○○○○○○○○(←住所)
有限責任社員 ○○○○
1 定款第8条を次のように改める。
第8条 当会社の業務執行社員は、次のとおりとする。
業務執行社員 ○○○○
業務執行社員 ○○○○
1 定款第9条は現状通りとする。
第9条 業務執行社員○○○○は、当会社を代表する。
以上に同意する。
令和○年○月○日
○○○○○○○○○○○○○○○○(←会社の住所)
合同会社○○○○
業務執行社員 ○○○○
加入社員 ○○○○
Googleドキュメント
申請用総合ソフト
合同会社変更登記申請書の作成
ここからは登記・供託オンライン申請システムの登記ねっとで配布されている、申請用総合ソフトを使って進めます。残念ながらWindowsのみの対応です。なお、夜間や土日祝はオンラインに接続できずにオフラインの作業のみとなってしまいますのでご注意を。
申請用総合ソフトのダウンロード
ダウンロードからインストール、アカウント作成などの手順は省いて説明します。
申請様式一覧様式を選択する画面では、商業登記申請書→登記申請書【署名要】→登記申請書(会社用):株式会社,特例有限会社,合名会社,合資会社,合同会社,外国会社【署名要】、を選択します。
今回は合同会社に関する変更登記を申請するので、「( )登記申請書」と記載がある場所には「合同会社変更」と入力します。
申請対象の会社・法人の指定方法はオンライン会社・法人検索が推奨されているので素直にそちらを使いましょう。この手順を終えると現在登記されている、会社種別や商号などが自動入力されます。
「登記の事由」の部分には「代表社員の住所変更」と「業務執行社員の加入」を2行にわたって入力します。自分は今回の社員の加入の手続きを一緒に自分自身の住所変更登記も行いました。本当は住所移転した日から14日以内(だったかな?)に登記をしないといけないそうですが、この変更登記申請予定があったので、先送りにしていました。
「登記すべき事項」の部分には最初から「別紙のとおり」と入力されており「別紙表示」のボタンを押すと別紙の入力画面になります。そちらには下記のように入力をします。
別紙(登記すべき事項)
「社員に関する事項」
「資格」代表社員
「住所」○○○○○○○○○○○○(←新住所)
「氏名」○○○○
「原因年月日」令和○年○月○日住所移転
「社員に関する事項」
「資格」業務執行社員
「氏名」○○○○(←加入する社員の名前)
「原因年月日」令和○年○月○日加入
次に「登録免許税額」の部分は1万円になるように「10000」を入力します。
「添付書類」の部分には先に作成した同意書のタイトル「総社員の同意書」を入力します。
「別送の有無」の部分は「総社員の同意書」を税務署に郵送する必要があるので「有」を選択します。
申請人の箇所の「本店」には登記されている住所を、商号には「合同会社○○○○」など会社名を、代表者の住所の箇所には「新しく登記する住所」を、資格には「代表社員」を、氏名には代表社員の氏名を入力します。
申請先登記所の部分は「申請先登記所選択」というボタンがあるので、そこから登記されている住所の管轄の登記先を選択します。
これですべての入力が完了したので、ウィンドウ上部にある「チェック」を押して入力箇所に問題が無いかを確認します。
この後は、電子署名の付与→申請データの送信→登録免許税の納付をすれば、申請用総合ソフト上での作業は終了です。このあと添付書類を郵送する際に同封する「到達通知.pdf」を保存しておきましょう。ちなみに電子署名の付与は代表社員である自分自身のマイナンバーカードで問題有りませんでした。
添付書類の郵送
先に作成した「総社員の同意書」を法務局へ簡易書留にて郵送します。この際に申請用総合ソフトで申請データを送信したあとに表示できる「到達通知.pdf」を印刷して同封しておきましょう。
はんこの必要性
総社員(今回は代表社員である自分自身と新社員である友人)のはんこの押印は不要、とウェブ登記手続案内でお話した司法書士の先生はおっしゃられていました。 しかし、今回ははんこごときで補正で余計なやり取りが発生しても嫌なので、はじめから2名のはんこを押したものを送付しました。
手続終了
手続き | 日付 |
---|---|
申請データの送信 | 7月2日(火)8:50頃 |
添付書類の郵送 | 7月2日(火)10:30頃 |
添付書類の到着 | 7月3日(水) |
手続終了のメール通知 | 7月9日(火)18:20頃 |
登記簿謄本の確認 | 7月11日(木)午前中 |
上記のスケジュールでスムーズに業務執行社員加入の変更登記をすることができました。登記簿謄本(履歴事項全部証明書)も問題なく変更できていました。
感想
今回始めて商業登記の手続きを自分で、且つオンラインで行いましたが正直こんなにスムーズに登記できるとは思っていなかったのでいい意味で拍子抜けしました。マイクロ法人の以下に経費をかけずにこういった手続きをできるかが大切なので、可能な限り自分でできる事務作業(決算や社会保険関連や登記など)は自分でやるのが良さそうですね。
なんとなく法務局や税務署や年金事務所に質問するのは気が引けますが、向こうとしても正しく申告してもらいたいようなので、意外と親切に対応してもらえるのも最後に強調しておきたいです。
みなさん、是非自分で、且つオンラインでマイクロ法人の手続きを行いましょう!
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